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2026.9.30

介護現場の感染症対策~日頃からできる予防と発生時の対応~

高齢者介護の現場では、インフルエンザやノロウイルス、感染性胃腸炎、呼吸器感染症など、さまざまな感染症への対策が必要です。

 

特に高齢者施設や介護事業所では、利用者が集団で生活したり、職員が複数の利用者に接したりするため、ひとたび感染症が持ち込まれると、施設内で広がる可能性があります。

だからこそ重要なのが、感染症が発生してから慌てて対応するのではなく、「普段から感染を広げないための対策」を続けておくことです。

 

厚生労働省の「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」でも、感染管理体制を整えたうえで、日頃の衛生管理やケアにおける感染対策、感染症発生時の対応を行うことが示されています。

 

なぜ介護現場では感染症対策が重要なの?

 

高齢者は、加齢や基礎疾患などによって感染症にかかった際に重症化するリスクが高い場合があります。

また、介護施設は「生活の場」でもあります。

 

食事、入浴、排泄、口腔ケアなど、利用者の生活を支えるさまざまな場面で職員が身体に接するため、感染症への対応では医療機関とは異なる視点も必要です。

そのため、感染症を完全になくすことだけを目指すのではなく、

「感染を持ち込まない」

「感染を広げない」

「感染が発生したら早期に対応する」

という考え方が重要になります。

 

 

まず基本になる「標準予防策」

 

感染症対策の基本となるのが、標準予防策(スタンダード・プリコーション)です。

 

これは、感染症の有無にかかわらず、血液、体液、排泄物などを感染性のあるものとして扱い、必要な対策を行う考え方です。

介護現場では、次のような場面が日常的にあります。

・食事介助

・排泄介助

・おむつ交換

・口腔ケア

・喀痰吸引などの医療的ケア

・傷や皮膚トラブルへの処置

「この利用者は感染症ではないから大丈夫」と考えるのではなく、日頃から基本的な感染対策を行うことが重要です。

 

 

介護職が日頃から意識したい5つのポイント

 

① 手洗い・手指衛生

 

感染対策の基本は手指衛生です。

利用者に触れる前後、排泄介助の後など、必要なタイミングで適切に手洗いや手指消毒を行います。

 

「手袋をしているから大丈夫」と考えるのも注意が必要です。

手袋を外した後の手指衛生も大切です。

 

 

② マスクや手袋などを適切に使う

 

感染症の種類やケアの内容に応じて、マスク、手袋、エプロンなどの個人防護具(PPE)を適切に使用します。

大切なのは、「とにかく着ける」ことではなく、必要な場面で正しく使うこと。

特に排泄物や嘔吐物などを扱う場合は、感染を広げないための適切な対応が必要です。

 

 

③ 利用者の体調変化を見逃さない

 

感染症対策では、「感染してから対応する」のではなく、早い段階で変化に気づくことも重要です。

 

例えば、

・発熱

・咳、痰、鼻水

・嘔吐、下痢

・食欲低下

・倦怠感

・いつもと違う様子

など、普段との違いを観察します。

 

高齢者の場合、典型的な症状がはっきり現れないこともあるため、「いつもと違う」という気づきを大切にしましょう。

健康状態の観察と記録は、感染症発生時の早期対応にもつながります。

 

 

④ 環境を清潔に保つ

 

感染症対策は、利用者や職員の手洗いだけではありません。

施設や事業所内の環境整備も重要です。

 

手すり、ドアノブ、テーブルなど、複数の人が触れる場所について、施設のルールに沿って適切に清掃・消毒します。

また、嘔吐物や排泄物などを処理するときには、周囲への感染拡大を防ぐため、決められた方法で対応することが必要です。

 

 

⑤ 職員自身の健康管理

 

感染対策では、利用者だけでなく職員自身の健康管理も重要です。

職員が体調不良のまま勤務することで、感染を広げてしまう可能性があります。

 

「人手が足りないから」と無理をするのではなく、体調に異変がある場合には、事業所のルールに従って管理者等へ報告し、適切な対応を取ることが大切です。

 

厚生労働省のマニュアルでも、職員が感染源・媒介者にならないための健康管理が感染対策の重要な要素として示されています。

 

感染症が発生したら、まず何をする?

 

どれだけ対策をしていても、感染症の発生を完全になくすことはできません。

重要なのは、発生したときに「誰が・何を・どのように行うのか」をあらかじめ決めておくことです。

 

感染症が疑われる利用者が出た場合には、施設の感染対策マニュアルや指針に沿って、

  1. 発生状況を把握する
  2. 必要な感染拡大防止策を行う
  3. 管理者・関係職員へ報告する
  4. 必要に応じて医療機関や行政などと連携する
  5. 感染者や接触者の状況を記録する

といった対応を行います。

 

具体的な対応は、感染症の種類や事業所の形態によって異なるため、「その場で考える」のではなく、普段からマニュアルを確認しておくことが重要です。

 

 

感染対策は「個人任せ」にしない

 

感染症対策というと、「職員がきちんと手洗いをする」といった個人の行動に目が向きがちです。

しかし、実際にはそれだけでは十分ではありません。

 

事業所として、

・感染対策の基本的な考え方を共有する

・感染対策委員会などの体制を整える

・指針やマニュアルを整備する

・職員研修を行う

・訓練やシミュレーションを行う

・発生時の連絡体制を決めておく

・必要な物品を準備しておく

など、組織として感染症に備えることが重要です。

 

特に、感染症が発生したときに「マニュアルがどこにあるか分からない」「誰に報告すればいいか分からない」という状態では、初動が遅れてしまいます。

職員全員が、基本的な対応を理解していることが大切です。

 

 

感染対策は「特別なこと」ではない

 

感染症対策というと、流行が始まったときだけ行う特別な取り組みのように感じるかもしれません。

しかし、本当に大切なのは、普段のケアの中に感染対策を組み込むことです。

 

手指衛生を行う。

適切に個人防護具を使用する。

利用者の小さな体調変化に気づく。

環境を清潔に保つ。

自分自身の健康管理をする。

 

そして、感染症が発生したときには、決められた手順に沿って速やかに対応する。

こうした一つひとつの積み重ねが、利用者と職員を守り、施設内での感染拡大を防ぐことにつながります。

 

 

まとめ

 

介護現場の感染症対策で大切なのは、「感染症が発生してから頑張る」のではなく、「発生する前から備えておく」ことです。

 

☑ 手指衛生を適切に行う

☑ 標準予防策を基本にケアを行う

☑ 利用者の体調変化を見逃さない

☑ 環境を清潔に保つ

☑ 職員自身の健康管理を行う

☑ 感染症発生時の対応手順を確認しておく

☑ 研修や訓練を通して、職員間で対応を共有する

 

感染症対策は、一部の職員だけが担当するものではありません。

 

「自分の行動が、次の感染を防ぐ」

 

そうした意識を職員一人ひとりが持つことが、介護現場の感染対策の第一歩です。

 

参考資料

・厚生労働省「介護現場における感染対策の手引き(第3版)」

・厚生労働省「高齢者介護施設における感染対策マニュアル 改訂版」

・厚生労働省「介護事業所等向けの新型コロナウイルス感染症対策等まとめページ」

 

※本コラムは、厚生労働省等の公表資料を参考に、介護職向けに編集・構成しています。個別の感染症への対応については、各事業所の感染対策指針・マニュアルおよび関係機関からの最新の情報をご確認ください。

 

 

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