訪問介護事業所の運営指導では、訪問介護員が事業所に雇用されていることや、適切な勤務体制が確保されていることを確認するため、雇用契約書や労働条件通知書などの提示を求められることがあります。
雇用契約書を作成しているから大丈夫と思っていても、記載内容が実際の働き方と合っていなかったり、所属する事業所が分からない内容になっていたりすると、運営指導で確認や指摘を受ける可能性があります。
特に注意したいのが、登録ヘルパーを含む訪問介護員の「就業場所・勤務場所」の記載です。

雇用契約書には就業場所を明示する
労働者を雇い入れる際には、賃金、労働時間、休日などの労働条件と併せて、就業場所を明示する必要があります。
さらに、2024年4月からは、すべての労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、次の内容を明示することが必要となりました。
・雇入れ直後の就業場所
・就業場所の変更の範囲
・雇入れ直後の業務内容
・業務内容の変更の範囲
訪問介護員は利用者宅へ直接訪問することが多いため、就業場所の書き方に迷うことがあります。
しかし、実際にサービスを提供する場所だけを記載すればよいとは限りません。
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「ご利用者宅」だけになっていませんか?
登録ヘルパーの雇用契約書や労働条件通知書の勤務場所に、次のような記載をしていないでしょうか。
・ご利用者宅
・担当する利用者宅
・○○様宅
・訪問先
訪問介護のサービス提供場所は利用者宅であるため、実態と無関係な記載ではありません。
しかし、この記載だけでは、訪問介護員がどの訪問介護事業所に所属しているのかが、雇用契約書上で明確になりません。
運営指導では、事業所に配置されている訪問介護員について、雇用関係や勤務実態、勤務体制などが確認されます。
そのため、勤務場所に利用者宅だけを記載するのではなく、所属する訪問介護事業所の名称を明記することが重要です。
特定の利用者名を記載すると、担当する利用者が変更になった場合に、雇用契約書の記載と実際の勤務場所が一致しなくなる可能性もあります。

おすすめの記載方法
勤務場所には、まず所属する事業所名を記載しましょう。
そのうえで、利用者宅などで勤務することを想定し、会社が指定する場所を含めた表現にする方法があります。
記載例
雇入れ直後の就業場所:○○訪問介護事業所及び会社が指示した場所
より具体的に記載する場合は、次のような表現も考えられます。
雇入れ直後の就業場所:○○訪問介護事業所及び会社が指定する利用者宅その他の訪問先
就業場所が将来変更となる可能性がある場合には、変更の範囲も明示します。
就業場所の変更の範囲:法人が運営する事業所及び会社が指示した場所
ただし、法人内の別事業所への異動を予定していない場合や、異動範囲を限定している場合には、実際の雇用条件に合わせて記載する必要があります。
「会社が指示した場所」と記載すれば、会社がどのような場所へでも自由に勤務させられるという意味ではありません。
実際の業務内容、採用時の説明、就業規則、本人との合意などとの整合性も必要です。
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勤務場所の記載例を比較

おすすめは、次のように事業所名と訪問先の両方を記載する方法です。
○○訪問介護事業所及び会社が指示した場所
これにより、所属する事業所を明確にしながら、利用者宅などで勤務する訪問介護の実態にも対応しやすくなります。

なぜ事業所名の記載が重要なのか
訪問介護事業所は、事業所ごとに人員基準を満たし、勤務体制を確保する必要があります。
運営指導では、勤務形態一覧表に記載された職員について、雇用契約書、資格証、出勤簿、給与台帳などを照合し、その事業所の従業者として勤務していることが確認される場合があります。
雇用契約書に所属事業所が記載されていないと、次のような確認を受ける可能性があります。
・どの事業所に所属する職員なのか
・当該事業所との雇用関係があるのか
・複数事業所を兼務しているのか
・勤務形態一覧表と雇用契約書の内容が一致しているか
・訪問介護員として勤務する場所や業務が明確になっているか
特に複数の訪問介護事業所や介護サービス事業所を運営している法人では、法人名だけでなく、所属する事業所名を明確にすることが大切です。

登録ヘルパーだから事業所名が不要とは限らない
登録ヘルパーは、自宅から利用者宅へ直接訪問し、サービス終了後も事業所へ立ち寄らずに帰宅することがあります。
そのため、事業所で勤務する時間が少なく、勤務場所を「利用者宅」とだけ記載してしまうことがあります。
しかし、直行直帰が中心であっても、その訪問介護員は、訪問介護事業所の従業者としてサービスを提供します。
サービス提供責任者から指示を受け、訪問介護計画に基づいてサービスを提供し、記録や報告を行う以上、所属する事業所との関係を雇用契約書上でも明確にしておく必要があります。
登録ヘルパーについても、勤務場所には所属事業所名を記載し、そのうえで利用者宅などの訪問先を含む表現にしましょう。

勤務場所だけでなく業務内容も確認する
雇用契約書を見直す際は、勤務場所だけでなく、業務内容も確認しましょう。
例えば、業務内容が単に「介護業務」とだけ記載されていると、訪問介護員として行う業務の範囲が分かりにくい場合があります。
記載例
雇入れ直後の業務:訪問介護員として行う身体介護、生活援助、サービス提供記録の作成、報告その他これらに付随する業務
将来的に業務内容が変更となる可能性がある場合は、その変更の範囲も明示します。
業務の変更の範囲:法人が行う介護サービス及びこれに付随する業務
こちらも、実際に予定している業務や異動の範囲に合わせて記載することが必要です。
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社会保険労務士のアドバイスも踏まえて確認を
今回紹介した勤務場所の記載方法は、訪問介護事業所における運営指導上の確認事項だけでなく、社会保険労務士から受けた労務管理上のアドバイスも踏まえて整理しています。
雇用契約書は、介護保険制度上の人員配置を確認する書類であると同時に、事業者と職員との労働条件を明確にする重要な書類です。
そのため、運営指導への対応だけを目的に形式を整えるのではなく、実際の働き方、就業規則、労働条件通知書などと内容を一致させる必要があります。
法人ごとに雇用形態、直行直帰の取扱い、事業所間の異動範囲などが異なるため、雇用契約書を変更する際は、必要に応じて社会保険労務士などの専門家へ確認することをおすすめします。

まとめ
訪問介護事業所の雇用契約書では、勤務場所に「ご利用者宅」や特定の利用者名だけを記載するのではなく、所属する訪問介護事業所の名称を明記することが大切です。
登録ヘルパーが利用者宅へ直行直帰する場合も、訪問介護事業所の従業者としてサービスを提供することに変わりはありません。
勤務場所のおすすめの記載例は、次のとおりです。
○○訪問介護事業所及び会社が指示した場所
また、2024年4月以降は、雇入れ直後の就業場所だけでなく、就業場所の変更の範囲についても明示が必要です。次の点を確認しておきましょう。
・所属する訪問介護事業所名が記載されているか
・利用者宅などで勤務する実態が反映されているか
・特定の利用者名だけの記載になっていないか
・就業場所の変更の範囲が記載されているか
・業務内容とその変更の範囲が明示されているか
・勤務形態一覧表や就業規則と内容が一致しているか
雇用契約書は、作成して保管していればよいものではありません。
運営指導で確認された際に、所属事業所、雇用関係、勤務場所、業務内容を説明できるよう、実態に合った内容へ整えておきましょう。
※本稿は、訪問介護事業所の雇用契約書に関する一般的な注意点を、社会保険労務士からの助言も踏まえて整理したものです。指定権者によって確認方法が異なる場合があります。また、個別の労働条件や就業規則によって適切な記載内容は異なるため、具体的な契約書の作成・変更については、管轄の指定権者、労働基準監督署または社会保険労務士等へご確認ください。
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