認知症ケアの現場では、
「夕方になると帰宅願望が強くなる」
「落ち着かなくなる」
「不穏な発言が増える」
といった場面をよく目にします。
いわゆる「夕方不穏(サンセット症候群)」です。
介護職であれば誰もが知っている症状ですが、実は近年、
「認知症だから仕方ない」と片付けられないケースも注目されています。
夕方不穏は、本当に認知症だけが原因なのでしょうか。

実は“夕方”が原因ではない?
夕方不穏という言葉から、「夕方になるから起きる」
と思われがちですが、実際にはそう単純ではありません。
夕方という時間帯は、
・疲労が蓄積する
・空腹になる
・水分不足になる
・排泄トラブルが起きやすい
など、さまざまな要因が重なる時間帯です。
つまり、
不穏を引き起こしているのは認知症そのものではなく、
「身体的な不快感」である場合も少なくありません。

水分不足は想像以上に影響する
高齢者は喉の渇きを感じにくくなります。
さらに、
「トイレが近くなるから飲みたくない」
という方も少なくありません。
脱水状態になると、
・集中力低下
・倦怠感
・イライラ
・せん妄様症状
などが現れやすくなります。
現場では、「今日はいつもより落ち着かないな」
という利用者様が、コップ1~2杯の水分補給後に穏やかになることもあります。
不穏時に声かけばかりに意識が向きがちですが、水分摂取状況を振り返ることも大切です。

見落とされがちな“便秘”
便秘は認知症の行動・心理症状(BPSD)を悪化させる要因の一つです。
しかし、
「排便がない=便秘」ではありません。
高齢者は便意をうまく表現できず、腹部不快感や違和感を
「帰りたい」
「落ち着かない」
という言葉で表現していることもあります。
夕方不穏が続く時は、
排便状況を確認してみると意外な発見があるかもしれません。

実は職員の動きが影響していることも
夕方は介護現場が最も忙しくなる時間帯です。
夜勤者への申し送り
夕食準備
記録
送迎対応
職員が慌ただしく動き始めます。
利用者様は職員が思う以上に周囲の変化を感じ取っています。
・普段は隣で話を聞いてくれる職員が急に忙しくなる。
・声を掛けても返事が短くなる。
・フロアの空気が慌ただしくなる。
すると、「何かあるのではないか」という不安が生まれます。
つまり、利用者様ではなく、職員側の環境変化が不穏の引き金になっている場合もあるのです。

「帰りたい」は本当に帰りたいのか
帰宅願望への対応で重要なのは、言葉をそのまま受け取らないことです。
「帰りたい」の裏には、
・不安
・寂しさ
・疲労
・役割喪失感
が隠れていることがあります。
特に夕方は、昔の生活の中で
「家族が帰ってくる時間」
「夕飯を作る時間」
と重なるため、本人の中では自然な感覚として表出していることもあります。

まとめ
夕方不穏は認知症の症状として説明されることが多いですが、
実際には、
・水分不足
・便秘
・疲労
・空腹
・職員の忙しさ
・環境変化
など、複数の要因が絡み合っています。
不穏な行動を止めることに意識を向けるのではなく、
「今日は何が普段と違うのだろう」
という視点で観察すると、新たな気付きにつながるかもしれません。
夕方不穏への対応力は、認知症の知識だけでなく、“生活全体を見る視点”によって大きく変わるのです。
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