「夜中に何度もトイレに起きる」
という高齢者は少なくありません。
夜間に排尿のために1回以上起きることを「夜間頻尿」といい、加齢とともに増えることが知られています。
では、なぜ年齢を重ねると夜中にトイレへ行く回数が増えるのでしょうか?

原因は「膀胱」だけではありません
夜間頻尿というと、「膀胱に尿をたくさんためられなくなったから」と考えがちですが、原因はそれだけではありません。
大きく分けると、
・夜間につくられる尿の量が増える
・膀胱にためられる尿の量が少なくなる
・眠りが浅く、目が覚めてトイレに行く
といった原因があります。
実際には、これらが組み合わさっていることもあります。

① 夜間につくられる尿が増える
高齢になると、夜間の尿量が増えやすくなります。
その一因として、尿の量を調整する「抗利尿ホルモン(ADH)」の日内変動の変化があります。
また、高血圧や心疾患、腎機能の低下などが夜間の尿量増加につながることもあります。
日中に脚などにたまった水分が、横になることで血管内に戻り、夜間の尿として排出されることもあります。
② 膀胱にためられる量が少なくなる
膀胱が過敏になり、まだ尿が十分にたまっていないのに尿意を感じる「過活動膀胱」なども、夜間頻尿の原因になります。
男性では、前立腺肥大症によって尿が出にくくなり、膀胱が過敏になることで夜間頻尿につながる場合もあります。
意外なのが、睡眠の問題です。
眠りが浅く、夜中に何度も目が覚めると、そのたびに
「せっかくだからトイレに行っておこう」と排尿することがあります。
つまり、「尿がたまったから目が覚めた」のではなく、「目が覚めたからトイレに行く」というケースもあるのです。

夜間頻尿で気をつけたいのが「転倒」
介護の現場では、夜間頻尿を単なる排泄の問題として考えないことも大切です。
夜中に起きて、暗い部屋の中をトイレまで歩く――。
このとき、寝起きで身体が思うように動かなかったり、視界が暗かったりすると、転倒につながる可能性があります。
日本排尿機能学会・日本泌尿器科学会のガイドラインでも、夜間頻尿は高齢者の転倒リスク要因の一つとされています。
国立長寿医療研究センターも、暗い中でトイレに行くことによる転倒の危険性を指摘しています。
そのため、介護現場では、
「夜中に何回トイレに行くか」だけでなく、「安全にトイレまで行けているか」
という視点も重要になります。

介護職が見ておきたいポイント
夜間の排泄介助では、次のような変化にも目を向けてみましょう。
・夜間のトイレの回数が急に増えていないか
・1回の排尿量が極端に少なくないか
・夜間に何度も起きて、日中眠そうにしていないか
・トイレまでの移動時にふらつきがないか
・ベッドからトイレまでの動線に障害物がないか
・夜間の照明が十分か
また、夜間頻尿には、糖尿病、高血圧、心疾患、腎機能障害、睡眠時無呼吸症候群など、ほかの病気が関係している場合もあります。
回数が急に増えた場合や、日中の生活に支障が出ている場合には、「年齢のせい」と決めつけず、医療機関への相談につなげることも大切です。

「夜中にトイレ」は、見逃したくないサイン
高齢者の夜間頻尿は、加齢に伴って起こりやすい症状です。
しかし、その背景には、水分摂取、薬、膀胱の機能、睡眠、循環器や腎臓などの病気が関係していることがあります。
「また夜中にトイレか」と回数だけを見るのではなく、「なぜ夜中に起きているのか」「安全に移動できているか」まで考える。
それが、高齢者の睡眠と安全を守る排泄ケアにつながります。
【参考資料】
・日本泌尿器科学会 「夜間、何度も排尿で起きる」
・日本排尿機能学会/日本泌尿器科学会「夜間頻尿診療ガイドライン[第2版]」
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